(承前)自分の心以外の全てのものは、貴方の心の平和や幸福に対しては直接の関係はないのである。貴方が何を求めているように見えようとも、実は貴方は「それらによって得られるはずだ」と思っている心の平和や幸福を求めているのである。これが前回までのおおざっぱな結論です。
ならば、私はこれから幸せになろう、変わろうというときに何故環境や人間関係や所有物を替えようとするのか、何故そういうことに意味があり有効なのか、についても説明いたしました。
本質的には、自分の心のありようを変えるのは他ならぬ自分以外にはないのだから貴方は誰の、或いは何の力も借りずに自分ひとりでこの場で心の状態を変えることができるはずなのです。しかし、実際には多くの人がこういうことに慣れていません。自分の外側にあるあれこれを変えてみようと考えるのも、まず先に自分の心の状態が変ってきているからでありそのことの表れなのですが、心が不安定なままだとこれがうまくできなくなり悪循環に陥ってしまうのです。
一般的に、方位というのは自然界に存在している気の状態に呼応するものです。そして人間も本質的には「気」あるいは「意識」であり、自然の一部であることを考えればその時々の自分の「気」=「波動」に即した動きをするのがもっとも無理のないあり方である、とわかります。風向きと同じ方向を向いていれば簡単に前に行かれるのに、逆らおうとすれば強烈な抵抗にあってしまうし、自分が水を欲しているときにカンカン照りの場所に行けば熱中症にかかってしまいますね。
心が安定しているときは「無理なく自然の流れに乗っている」ときである、とも言えるのであまりあれこれ考えなくても「何となくこのあたりがいいな」と感じた方位が鑑定上も「吉方位」となっている場合が多いのです。また、「このあたりに住みたい」という希望があるとして、「でも何となく今年は動きたくない」と思っている場合にも、実はやはり鑑定上も「今年のこの方位は凶方」となっていたりするわけです。
しかし、不安定な状態にあったりエゴ的発想に囚われていたりするとこのあたりの勘や判断がまるっきり働かなくなってしまうのです。
たとえば、例の「待てない!」状態に陥っている人など、別に急ぐ必要など何もないのに「早く引っ越さなくてはならない!」という思い込みに何故か囚われているので、自分の波動がどういう流れをしているかなど全く感じる余裕がなくなってしまいます。
あるいは、自分の波動に合っているかどうかよりも単なる利便性とかかっこよさなどを重視して動いてしまう人々もいます。というか、この場合も外的条件に囚われてしまって「自分の波動」などは全く感じることができなくなってしまっているのです。実は水を欲しているのにそのことを認識できず「熱さ」を「よいこと」と思い込んで動いてしまうようなものです。ということは、他ならぬ自分のことなのに肝心の自分自身を度外視して選び動こうとしているという状態になるわけで、本人は自分の利益のために動いているつもりが実際には逆のことをしているという、まあ徒労以上の悲惨な状態とも言えてしまいます。
つまり、安定した状態ならごく普通に動いても自然にいわゆる「よい方位」に惹かれるものなのに、不安定な状態のままで動こうとすると自分とは全く合わない方向の土地を「よい」と感じてしまったりするわけです。これは、たとえば不安定な状態にあるときにパートナーとして選んだ人が実は自分に全く合わない人だった、というのと全く同じ原理です。
でも、いくら「合わない」といわれても私はどうしてもこれが欲しいんだ、ここに行きたいんだ、という人もいるでしょう。そこです。これなのです。貴方は、心の平安や幸福が欲しいのか、それとも「これ」や「ここに住むこと」が欲しいのか。「これ」「ここに住むこと」が欲しいのは、それらが自分を幸福にしてくれると思っているからではないのか?そうではない、と知らされても尚且つそれらを求めてしまう、という状態を「執着」というのです。
まあ、こういうわけで、「今の自分の心が平和で安定しているという自信が持てない」ならば自分の好みや判断に頼らずにリーディングで「よい方位」を知った上で動いたほうが賢明だということになるのです。
ところが、いわゆる気学による「吉方位・凶方位」というのは絶対的なものではないのです。さまざまな理由により、一般的な方位の良し悪しが全くあてはまらなくなってしまったという人もいますし、また体質(というしか表現が見当たりません)によっては一般的な見方が効かないという人もいます。ですから、私の場合は方位盤だけでなく必ずカードで確認することにしています。
方位と同列に述べるのはおかしいと感じるかもしれませんが、昨今では一般的になったいわゆる「ヒーリングストーン」類についても似たような説明が可能です。
この石はこれに効く、こういう作用がある、と知ったから身につけるというのはちょっと、いや大いに疑問です。それらは全て貴方が、おそらく不安定な状態を何とかしようとして・・・言い換えれば不安定な心の状態において、「自分の波動はこれに合っているか」ということ即ち「肝心の自分自身」を度外視して選んだものに過ぎないからです。
本当は、貴方が自然に惹かれたものが今の貴方には一番合っているはずなのですが、心が不安定な状態だとその「自然に」ということができなくなるのです。その結果「あら、恋愛に効くの?だったら今彼とのことで悩んでいる私にはピッタリだわ」などと思ってトンチンカンなものを選んでしまったりします。こういう失敗を避けるためにはやはりリーディングなり何なりでちゃんと見てもらったほうが安全でしょう。
私の経験では、リーディングで「今の貴方にはこの色が良いですよ」と出た場合殆どの人が「えっ、私も今その色が気になっていたんです」とか「昨日その色の服を買ったばかりです」などという反応を示すのです。どんな色を、どんな石を身につければ自分はより良くなるだろうか?などということを考えずにごく自然に動けば難なく自分に合うものを選べてしまうものなのです。それを、本などで得た情報をそのまま鵜呑みにして「これが私を幸福にしてくれるはずだ」というアタマの、或いはエゴ的判断から選んでしまうのはどうもあまりうまく行かないようです。
また、「好み」というのも単なる「思い込み」と化してしまっている場合が多いので注意が必要です。「こういうのは嫌い、自分には合わない」と思い込んでしまっていればそれらが今の貴方の波動に合っていたとしてもそのことを認識できなくなります。
そして、方位にしろ石や色にしろ、それら自体が貴方を守ってくれたり幸福にしてくれたりする力を持っているわけではない、ということを肝に銘じておいて下さい。それらはやはり「外側にあるもの」であり「それら自体には別に特別な意味は無い」のです。それを選ぶ貴方の心のあり方が反映され、貴方の波動に一致したときに初めてそのことによって作用が生じるのだし、本来は幸せになったり心の平安を得たりするためにあれこれの助けを借りる必要などないのです。
私は決して唯物論者ではありません。ただ、心の状態を何とかするのに心以外の何かを持ってこなくてはならない、という考え方が本質的にはおかしいだろうと確信しているのに過ぎません。それに、このあたりがわかっていないと怪しげな「開運グッズ」に散財してしまう危険もあるではないですか。
とにかく、いつでも常に問題になるのは実は「自分の内側」でしかないのだ、とよくよく認識しておくことが大切なのです。